ビニール傘を選ばない未来へ
突飛に感じるかもしれませんが、近い将来ビニール傘は恥ずかしいと感じる社会が到来すると、私たちは考えています。
「まさかそんな…」と半信半疑に思われる人もいるでしょう。でも、タバコに起きた劇的な変化をみてください。20年前の喫煙者たちに現在の話をしても「まさかそんな…」と同じような反応をしたに違いありません。
世界がこれからどう進むのか。倫理観はどうアップデートされてゆくのか。私たちは、常にそうした分岐点に立ち会っていることに自覚的でありたいと思っています。
ではこれから、「ビニール傘を選ばない未来」が到来する理由を、できる限り噛み砕いてお伝えしたいと思います。
傘が大好きな日本人
日本は傘の所有数が世界一です。傘好きなのはうれしい事実ですが、そのおよそ半数はビニール傘でしめられます。
単純に計算してみます。日本の人口が1.2億人。傘の平均所持数が3.3本。その内ビニール傘は1.6本。つまりおよそ2億本のビニール傘が常時日本にはあり、壊れやすいことも加味すれば、生産と廃棄は相当数に及ぶことが推測できます。
ビニール傘の負の側面
ビニール傘は安価で使い勝手がよい反面、気安く捨てられもします。その負の側面に向き合わねばならない時代になっています。
先日、NHKで興味深い特集がくまれていました。ビニール傘の処分についての特集です。重要な点を引用します。
”各地で回収されたビニール傘が、ひと月に20トンから30トンも運ばれてくる”
”ビニール傘は鉄とプラスチック部分の分別が難しく、リサイクルに適していない”
”今、追い打ちをかけているのが、これまで海外へ処分を頼っていたプラスチックごみの問題です。”
ビニール傘はリサイクルに適しておらず、にもかかわらず廃棄さえしづらくなってきているのです。
世界が直面するゴミ問題
プラスチックごみ問題という言葉を聞いたことがあるでしょうか。2017年に中国が「海外ゴミの輸入を禁止する」と宣言し話題になりました。さらに先日、マレーシアも「プラスチックごみを送り返す」と宣言。世界に衝撃を与えました。
なぜ中国やマレーシアはそのような処置を講じたのか。
実は私たちの出したプラスチックごみの多くが、海外に送られていたのです。一部の国が出したゴミを他の国に押し付ける――そのようなやり方の異常性が認識され始めています。
そのような中で、カナダが早速、使い捨てプラスチックを使用禁止にする方針を固め、法整備を進めています。さらに2019年のG20会合でもプラスチックごみ削減が主要な課題として話し合われ、合意されています。
今後ますます解決への動きが加速した時、ビニール傘への認識はどうなるでしょうか。「ビニール傘は避けようかなあ」そう思う人が増えてゆく未来が見えてきませんか。
傘専門ブランドとして
未来がどうなるかはわかりません。ただひとつ確かなことは、自国のごみを他国に押し付ける罪深さを、私たちはもう無視できないという現実です。いや、無視したくはないのです。
どのようにつくり、どのように廃棄されるのか。生産工程全体をとおしたモラルが、次世代の「ファッションセンス」だと信じて、今後とも傘を作ってゆきたいと考えています。